財団主催講演会を開催しました

6月7日(金)、波止場会館(横浜市中区)にて、財団主催講演会が行われ、平日にも関わらず、会場42名、オンライン38名が参加しました。

当財団の藤田順子理事長の開会の挨拶の後、基調講演「若者が主役になれる社会とは~大人が果たすべき役割~」では、NPO 法人わかもののまち代表理事で、こども家庭庁、審議会委員である土肥潤也氏を迎え、NPO設立のきっかけから子ども政策、また今までの活動ついてお話しいただきました。

「3週間でムーブメント起こせ!」からNPO設立へ

迷い、揺れ動く思春期の中・高校生の時期に「自分を表現する場所がなかった」と思いを抱えた中で、大学生の時に3週間で2000名の若者の声を集め、静岡市長に政策提言をしたことがきっかけで「NPO法人わかもののまち」を設立。
その提言から、若者が住んでみたい、住み続けたいと思う街づくりを進める「わかもののまち」推進事業が静岡市の総合戦略となりました。

「自分の行動から市の事業化となったことで、声をあげれば市政を変えることができる体験しました」と土肥氏。

ここから若い世代への政治参加に取り組む活動をはじめ、こども政策である、こども家庭庁発足に関わることになります。

こどもの意見反映と社会参画こそが「こどもまんなか社会」に

こども・若者が「対象」から「主体」と大きな転換となり、国や各地方自治体でも、こどもの意見を聞くことが義務付けされました。

どこで、だれが、どのようにこどもの声を聞けばいいのか…

「こどもが意見を言うためには、安心で安全な場所づくりが大切。またその為には小さいころから意思決定ををすることの経験が必要です。
そして、小さなきっかけから社会を変えられた、この成功体験の積み重ねが若者が社会を変えていくことになるのです。」

現在、国や各自治体では、様々な形でこども・若者の参画がなされており、静岡市をはじめ、菊川市、焼津市での事例を報告。
子ども時代を幸せに過ごすことができる「まちづくり」を若者声を反映しながらモデル化し、全国に広めたいと今後の抱負を話されました。

休憩後、当財団の余泰順事務局長より、採用状況と活動報告が行われた後、昨年度から主に交流会などの運営にご協力ただいている一般社団法人COAsを紹介。
代表理事、高木裕人氏より団体概要と活動説明が行われ、6つ以上の団体を創設し、累計2 0 0人以上の学生が参加している事業実績が報告されました。

事例報告では、料理研究家でユカナガシマクッキングサロン主宰、また認定NPO法人スペシャルオリンピックス日本・神奈川 副会長である長島由佳氏より
「ようこそカフェや夜間学級の活動にかかわって」をお話しいただきました。

心と体に栄養を満たす場として、横浜市の3部制・単位学校の市立高校における居場所づくりカフェ「ようこそカフェ」での食育事業や公立中学校夜間学級における食育事業、また在日外国人生活教育相談や認定NPO法人スペシャルオリンピックス日本・神奈川でのアスリート広報と幅広い活動をされています。

あなたのそばには誰かが必ずいることを「食」を通じて伝えたい

普通の明るい高校生に見えても複合的な困難から4年で卒業できない高校生たち。
定期的に開催している居場所づくりカフェ「ようこそカフェ」で子どもたちとじっくり向き合います。

「キノコが嫌いな子がいるのでキノコは使いたいけれど使わない。あなたを気にかけて大切にしている人がいるという気持ちを知ってもらいたい」と長島氏。

また、高校生が学校の敷地に農協青壮年部の方と一緒に野菜を栽培し、収穫した野菜を使った料理をみんなが美味しく食べることから、自分の行動が他者の喜びにつながっていると実感しているという。

「食」から互いを大切に思う心を育てること。
長島氏は「ココロとカラダにしみる美味しいCOOKINGは「心の豊かさ」を育むツールであり、誰でもが豊かな彩りある人生を作り出す人になってほしい。」と締めくくり、司会の小磯理香パルシステム神奈川理事により閉会となりました。

今回の講演会では初めての試みとして、会場とオンラインのハイブリット形式で行われました。途中、お見苦しい点がありましたことをお詫び申し上げます。

こども•若者と関わりのあるお二人の活動報告を聞き、明るい日本の未来を感じたともに、複合的な困難を抱えるこども•若者を取りこぼすことなく社会参画できるような環境を整えることが私たち大人の役割であり、改めて財団の役割に身を引き締められる講演会となりました。

アンケートにご協力いただきましてありがとうございました。
以下、質問2点とみなさまの感想を一部掲載いたします。

【質問1】
土肥さんにお伺いしたいのですが、特に熱意のある高校生や大学生は、経験や見地の限界から自分の意見に固執してしまったり、相手の意見をよく聞いてどこで折り合いをつけるかなど難しい場合があると思うのですが、人選のときに工夫があるとか、あるいは会議を重ねていくうちに「難しいな」と思うときがあるか、あったらどう対応するのか(簡単に交代することもできないと思うので)など、教えていただきたいと思いました。

土肥氏回答→
具体的な状況がわからないので抽象的な回答になりますが、むしろどうして(高校生や大学生が)そんな風に考えるのかを聴くことが大事ではないかと考えています。
大人の側が勝手にこの子は固執してしまっていると決めつけるのではなく、それも含めてフラットに対話するようにしています。

【質問2】
今までの活動の中で、困難やうまく行かなかったことはありましたか?どのように考えたり乗り越えたりして来られましたか?または、いまだに一番課題と感じることはどのようなことでしょうか?

土肥氏回答→
課題はたくさんありますが、課題をチャンスと思って楽しく乗り越えています!

長島氏回答→
・困難やうまくいかなかったこと・・・活動そのものは困難とはそれほど感じずに活動してきたと思います。多くの方々のご理解で、どうにかこうにかボランティアなども充実させてきました。強いて言えば、家族を犠牲にしないよう、家の中を走り回ることも多々あり、負担をしいたこともあるかなあと思います。
・どのように考えたり・・・今これができることが幸せであり、この時間は今しかないと思うと、どうにでもなってきたように思います。
・いまだに一番課題・・・ボランティアとは、各団体や活動協力者それぞれ考えや捉え方が違うので、交通費や対価などに関して、よりフェアな運営をするということ。

【土肥順也氏講演について感想】
・子ども・若者が「対象」から「主体」に転換していく変化ということが印象に残りました。声を聴くだけではなくともに社会参画していくことは、今とても必要なことだと思います。それを自ら実行されているところがすばらしいと思います。若者のパワーを感じられた講演会でした。

・昭和に育った自分は大人に意見する機会は皆無でしたが、理不尽さを感じていました。子供の時には大人に対し意見を表明する機会は大人になってからも生きる貴重な経験だと思います。

【長島由佳氏講演について感想】
・気持ちと行動力、発想と協力者などが素晴らしいです。また、長年の活動で世代交代のように受益者が支援者になるようなサイクルは理想だと思います。

・長島氏が取り組まれている、料理や食育を通しての「ようこそカフェ」や夜間学級に集う多彩な生徒さんたちとの交流。また、居場所ができることの大切さ。たくさんの事例を丁寧にお話していただき、温かい「食」や「居場所」が、どれだけ大切か分かりました。よいことだけではないと思いますので、困ったことやこれからの課題なども、もう少しお聞きしたかったです。